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2021年04月 Archive

Church of the Immaculate Conception, London (無原罪の御宿りの教会、ロンドン) ‐1-

  • Posted by: Kotomicreations
  • 2021-04-29 Thu 17:15:36
  • 場所
今回は、ロンドン市内のポッシュ(高級)なエリア、Mayfair(メイフェア)にある教会のイメージを。
カトリック教会で、19世紀中頃にJesuit(ジェスイット=イエズス会)によって建造されたもの。
もともとの財力のためかと思うのだけれど、イエズス会の教会はコンチネント(ヨーロッパ大陸)でも、華麗で装飾的。訪れた先の街で、イエズス会の教会があれば、見に行くようにしている。
このジェスイット会、汎ヨーロッパ的組織で、教皇に忠誠を誓っているので、18世紀ヨーロッパのナショナリズムには反していて、弾圧されるのだけれど、再び19世紀初期に復興が許可されてから、一段と勢力を増してきた。
この教会もちょうどその頃、1840年に建造されたものなので、ゴシック・リヴァイヴァルの端的な美意識を集約した形で作られているのだった。現在は、メイフェアの地区教会として機能している。
写真はすべて、2020年10月に訪れたときのもの。


Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
正面エントランス。
ゴシック(リヴァイヴァル)ローズ・ウィンドウが華やか。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
エントランスから主祭壇へのヴュー。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
主祭壇上のステンドグラス。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
クローズアップ。
Immaculate Conception (無原罪の御宿り)図像の、
聖母子が中心に描かれている。
この「無原罪の御宿り」の図像は、
通常は聖母子ではなくて、マリア像で、
白いチュニックにブルーのローヴ、
頭上に12の星が連なった冠を頂き、
太陽を背後に(光のビームに囲まれている)、
月(と蛇の場合も)を足下に踏む姿で描かれる。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
この壁画の図像も、無原罪の御宿り。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
主祭壇は、Pugin(ピュージン)のデザイン。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
その後ろのモザイク画の「受胎告知」と、

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
「聖母戴冠」。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
華麗で濃厚なゴシック・リヴァイヴァル様式の典型。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
カトリック教会なので、壁面にStations of the Cross
十字架の道行き)の図像が掲げられている。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
主祭壇脇の聖母像。
19世紀的な写実性と華やかさで彩られている。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
その上のタワー状の天蓋飾り。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
イエズス会の教会だったため、
聖ザビエルが描かれている。
インドから中国への布教の途中に、
中国南岸の島で病没している。
列聖された聖人さんだったとは知らなかったな・・・。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
サイドチャペルの一つ。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
主祭壇の右に接するサイドチャペル、
Sacred Heart Chapel(聖心チャペル)は
大理石彫刻がとりわけ美しい。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London


Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London


Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London


Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
その聖心チャペル祭壇。

Catholic Church of the Immaculate Conception, Mayfair, London
その上の天使像。

と、いうところで、次回も続きます。



Church of the Immaculate Conception
(無原罪の御宿りの教会)


Map:











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William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London(ウィリアム・ブレイク展、2019年、テート・ブリテン)-3-

2019年の11月に訪れたテート・ブリテン美術館でのWilliam Blakeウィリアム・ブレイク)展より、最終回。


Elohim Creating Adam, 1795-c.1805, William Blake
Elohim Creating Adam, 1795–c.1805
「アダムを創るエロヒム」
Book of Genesis(創世記)より。
ブレイクの観点では、
旧約聖書の神(エロヒム)は偽物であり、
人間の堕落はその創作の段階で、
堕落への印を刻まれている・・・
という見解を、すでに絡みつく蛇で象徴している。

Pity, c.1795, William Blake
Pity「哀れみ」 c.1795
エッチングプリントに、インクと水彩で着彩されている。
厳密にいえば挿絵ではなくて、
マクベスの一節からインスピレーションを得て描かれたもの。
「哀れみ、裸の赤子のように純真に、
疾風に乗り、あるいは、
目に見えぬ空気の流れに乗る、
ケルビム天使の馬のように
(恐るべき行為は吹聴されることになろう)。」
と、マクベスがダンカン暗殺を躊躇する一節。
これも昔から知っている絵画だけれど、
これまた、子供を失った女性の悲哀・・・的に
構図から、勝手に解釈していた。

The Night of Enitharmon's Joy (formarly called 'Hecate'), c.1795, William Blake
The Night of Enitharmon’s Joy
(formerly called ‘Hecate’)
エッチングプリントに、インク・水彩・テンペラで着彩。
死と夜の女神「ヘカテ」を描いたものと、
ずっと考えられてきた(私もそう認識していた)けれど、
実際にはブレイクの作り上げた神話の、
Enitharmon(エニサーモン)だそうで、
精神性の美と詩的インスピレーションの象徴なのだそう。

Newton, 1795-c.1805, William Blake
Newton 「ニュートン」, 1795-c.1805は、
アイザック・ニュートンを描いたもの。
ブレイクは根本的に啓蒙時代に反発している。
科学や啓蒙主義は
神秘・スピリチュアリティの対極にあるものとして。
おのずとこのニュートンの表現も、
肯定的なものではなくて、岩(物質)に同化し
精神性を失っていくものとして描かれているとのこと。

Satan Exulting over Eve, c.1795, William Blake
Satan Exulting over Eve, c.1795
「イヴに歓喜するサタン」
最初の「アダムを創るエロヒム」とまるで
対をなすかのような構図で、
イヴの陥落を歓喜するサタンを描いている。

Christ Blessing the Little Children, 1799, William Blake
Christ Blessing the Little Children, 1799
「幼子達に祝福を与えるキリスト」
これはキャンバスに描かれたテンペラ画。
ブレイクのパトロンだったThomas Butts
(トマス・バッツ)の発注で描かれた、
聖書の50枚の挿絵の一部。
マルコ福音書10章の、
「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。
止めてはならない。
神の国はこのような者の国である。
だれでも幼な子のように
神の国を受けいれる者でなければ、
そこにはいることは決してできない。」の一節を描いたもの。
画面の左に、説話中に祝福を受けに来た
子供と女性をたしなめる弟子が描かれている。

The Body of Christ Borne to the Tomb, c.1799-1800, William Blake
The Body of Christ Borne to the Tomb, c.1799-1800
これも同じシリーズのテンペラ画、
「墓に運ばれるキリストの死体」。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
これもそのシリーズで、「エジプトの聖母子」。
ブレイクの表現だと、仏像的でもある・・・(笑)。

An Allegory of the Spiritual Condition of Man, c.1811, William Blake
An Allegory of the Spiritual Condition of Man, c.1811
テンペラ画の作品「人間の精神状態の寓話」
Fitzwilliamミュージアムの所蔵ということ以外に
作品の詳細は不明なのだけれど、
上記の聖母子ととてもタッチが似ている。

Detail - An Allegory of the Spiritual Condition of Man, c.1811, William Blake
ディティール。
最初聖痕から血を流すキリスト像だと思っていたけれど、
よく見ると女性像ですよね、これ(笑)。

Detail- An Allegory of the Spiritual Condition of Man, c.1811, William Blake
もう一つディティール。

The Horse, c.1805, William Blake
The Horse, c.1805
「馬」とだけ題されたテンペラ画。
資料を調べてみたけれども、
全く背景が出てこなくて不明。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
The Resurrection-
The Angels rolling away the Stone from the Sepulchre
これはプリントに着彩の作品で、
「復活 -天使が墓から石を動かす」。
トーンも構図もとても好きな一枚。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
Mary Magdalen at the Sepulcher
これも美しい作品。上の復活に続く、
マグダラのマリアが復活したキリストと出会うシーン。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
The Assumption(「聖母被昇天」)。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
The Angels appearing to the Shepherds
聖書のイラストレーションのシリーズで、
「羊飼いたちに天使が現れる」
そして、メシアの誕生を告げるシーン。
小さな馬小屋が中央に描かれている。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
On the Morning of Christ's Nativity
よくにた構図のNativity(キリスト降誕)の作品が
いくつかあるようだけれど、
これは、ミルトンのThe Hymn(賛美歌)という
詩作品の挿絵として描かれたもの。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
David Delivered out of Many Waters
「ダビデが水から救い出される」
これは旧約聖書からのイラストレーションで、
サウル王から逃れて水の中で、
神に助けを求めて救われるシーン。
ブレイクの解釈では、神の存在を
キリストの姿として描いている。

Satan in his Original Glory, 'Thou wast Perfect till Inquity was Found in Thee', c.1805, William Blake
Satan in his Original Glory
‘Thou wast Perfect till Iniquity was Found in Thee’
これも旧約聖書から、
「元あった栄光の姿のサタン-
汝が中に不法が見いだされるまでは、
汝は完璧な存在であった。」
神に反逆して地獄に落とされる以前は、
12枚の翼を持つ大天使長ルシファーだった。
華麗な作品。

The Great Red Dragon and the Beast from the Sea, c.1805, William Blake
対象的に禍々しいイメージの、
The Great Red Dragon and the Beast from the Sea
「おおいなる赤き竜と海からの怪物」。
Book of Revelation(ヨハネの黙示録)の一節を描いている。
どちらも7つの頭と10の角を持つという。

044-Satan Spying on Adam and Eve and Raphael's Descent into Paradise, William Blake
Satan Spying on Adam and Eve and Raphael's Descent into Paradise
「アダムとイヴを偵察するサタンと、ラファエルの楽園への降臨」
聖書の題材だけれど、直接的には、
ミルトンの「失楽園」の挿絵として描かれている。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
同じく「失楽園」の挿絵より、
Raphael Warns Adam and Eve
「アダムとイヴに警告する大天使ラファエル」
サタンの存在を警告しているところ。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
The Judgment of Adam and Eve
「アダムとイヴの裁き」
「罪」と「死」から守られた
楽園からの追放を通告される。
左に運命の矢をかざした「死」が、
右に注がれる「罪」が描かれている。

The Expulsion from Eden
The Expulsion from Eden
「エデンからの追放」
兜をかぶって、二人を連行するのは、大天使ミカエル。
4体の楽園の守護ケルビムを騎乗の姿で描いているのは、
黙示録の四騎手からの連想ともいわれている。
ミルトンの失楽園は、楽園追放された人間が、
現世に立ち向かっていく積極性を描いているので、
ここでのアダムとイヴの表現も、
それ以前の聖書図版の、ただ絶望した姿ではなく、
力強く歩を進めるものとなっている。

Epitome of James Hervey's 'Meditations among the Tombs', c.1820-5, William Blake
Epitome of James Hervey’s ‘Meditations among the Tombs’
「ジェームス・ハーヴェイの”墓場での瞑想”の概要」
英18世紀の神学者ジェームス・ハーヴェイの著書を
ヴィジュアルで表現した、物語的な大作。
死の悲哀に生きる者が、
やがて天界で別れたものと再会する・・・
というような内容らしい。
死と再会ってなんだか仏教だと、
自然な感覚なんだけれどな。

Detail - Epitome of James Hervey's 'Meditations among the Tombs', c.1820-5, William Blake
ディティール。

Detail -Epitome of James Hervey's 'Meditations among the Tombs', c.1820-5, William Blake
最後に、もう一つディティールを。


標本箱 3エントリー引っ張ったけれど、これでも展示作品のほんの一部。
じっくり見て解説を読んでいたら、一体何時間かかるやら、というような内容の濃いエキジビションでした。
ウィリアム・ブレイク、19世紀末のビジュアル性を持って、18世紀末に生きてしまったのか。
いやしかし19世紀末だと、世の中の物質主義化がもっと進んでいたわけで、それこそ彼にはもっと耐えられなかっただろうな。
なんだか、時代と世の動向のニッチに生きた画家という印象です。





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William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London(ウィリアム・ブレイク展、2019年、テート・ブリテン)-2-

課税年度が変るやいなや、早々にオンラインで確定申告を済ませてしまって、すっきり。
コロナ蔓延防止ロックダウンの援助金で、ゴキゲンに生きていたこの一年を改めて思い知るのでした。
いやもうロックダウンのまま、余生を暮らしてもいいかもな・・・とか言っていたら、夏に向けてまた少しずつ規制がゆるんで来ているロンドンです。

今回も、2019年の11月に訪れたテート・ブリテン美術館でのWilliam Blakeウィリアム・ブレイク)展のイメージの続編を。


William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
レリーフ・エッチングの詩+挿絵の展示から引き続き・・・、
ブレイクの預言書の方のJerusalem(エルサレム)の扉絵。
正式には「エルサレム 巨人アルビオンの流出」というタイトル。
(曲がつけられてUKの準国歌扱いの
エルサレムはまた別物で、
あちらは預言詩『ミルトン』(Milton)の中の一節。)

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
最初のイラストレーション、
Los(ロス←インスピレーションを擬人化したこの詩篇の主人公)死の扉を開く。


・・・というところで、ブレイク最長の預言書を、内容をWikiから咀嚼して要約する・・・気力すらなくなってしまった(笑)。
ブレイクの中心にある普遍的テーマは、"かつてキリストが訪れて(都市伝説ですよ)、エルサレム(に匹敵する崇高な都)が栄えたアルビオン(イギリス)を、近代の産業革命・帝国主義といった「物質」の支配から解き放って、精神の栄えあるエルサレムを再びここに築きあげよう。"というように要約されるので、そのラインで詩篇が構築されているものかと。


William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
展示されている図版から、ヴィジュアル的に目に留まったものを、
かいつまんで撮影している。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London


William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
とてもアール・ヌーヴォー的な構成。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
この同じエルサレムのシリーズだったかどうか、
わからなくなってしまったけれど、
上のイラストレーションとタッチがにているので、
ここに入れてしまう。

Christian in the Arbour, William Blake
Christian in the Arbour(東屋のクリスチャン)。
これはまた別シリーズのイラストレーションで、
John Bunyan(ジョン・バニヤン)の「The Pilgrim's Progress」
(「巡礼者の行程」→「天路歴程」として知られている)
のために描かれた挿絵。

Christian Passes the Lions, William Blake
Christian Passes the Lions
(ライオンを通り過ぎるクリスチャン)。
ライオンがまるで、シーサー。

Christian before the Cross, William Blake
Christian before the Cross
(十字架を前にしたクリスチャン)。

Christian and Hopeful at the Gates of Heaven, William Blake
Christian and Hopeful at the Gates of Heaven
(天国の門のクリスチャンと希望)。
大団円なのだろうね。

Ilustrations of the Book of Job, 1823-5, William Blake
これは「ヨブ記」のイラストレーション。
海陸の怪物、Behemoth(ベヒモス) と
Leviathan(レヴィアタン)が描かれている。

Satan Smiting Job with Sore Boils, c.1826, William Blake
これもヨブ記の「ヨブに皮膚病を打つサタン」。
この絵画はインクテンペラ画だけれど、
同じ構図の上記のシリーズ、
イラストレーション版もある。

The Inscription over the Gate, 1824-7, William Blake
ブレイクの晩年の大作シリーズ、ダンテの「神曲」。
ウェルギリウスに伴われて、地獄の門をくぐる。
Abandon Hope All Ye Who Enter Here
「この門をくぐるものはすべての望みを捨てよ。」
という、件の名文が書かれた門をくぐった先は、
何層もの地獄が炎と氷に包まれている・・・
というシーン。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
地獄の第八層は汚職の罪人が落とされている。
ダンテは同時代の法王Nicholaus III(ニコラウス3世)を、
ここに落とし込んで、逆さに穴に挟まり、
足を火で焼かれるという刑に落とし込んでいる。
この絵を昔から知っているのだけれど、
上に描かれているのは、罪人(ここでは法王)が、
穴に投げ込まれるシーンだとばっかり思っていたら、
(ダンテと議論して)怒りでうごめく、
ニコラウス3世のあさましい姿に恐れをなして、
倒れかけたダンテを、
ウェリギリウスが支えるというシーンだそう。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
地獄の第七層は神を冒涜した罪人達。
ギリシャ神話で、ゼウスを冒涜して、
ゼウスの雷に打たれて死んだ、Capaneus(カパネウス)。
どこの神様でも、冒涜してはいかんのですね。

Dante and Vergil Approaching the Angel Who Gurds the Entrance of Pergatory, 1824-7, William Blake
「煉獄の入口を守る天使に近づく、
ダンテとウェリギリウス」。
この神曲の挿絵は、ブレイクの晩年の作品で、
完成を見ずに亡くなっている。
なので、後半の煉獄や天国編には、
未完成で残されている部分が多い。

Dante and Statius sleeping, Virgil watching (illustration to the 'Divine Comedy', Purgatorio XXVII), 1824-7, William Blake
無事、煉獄(Purgatory)に入って、
「眠るダンテとスタティウスを見守るウェリギリウス」。
煉獄は、地獄に落ちるほどの罪ではない罪を犯した者が、
ここで悔い改めて、罪を贖うと
天国に昇ることができるようになるとされている。
ここはもうかなりのどかな風景。
スタティウスはローマ帝政期の詩人。
キリスト教に改宗したことを(身の安全のために)
隠していたことによる「怠惰」の罪を贖うために、
煉獄の第四テラスに封じられていたのだそう。

Matilda and Dante on the Banks of the Lethe with Beatrice on the Triumphal Chariot, 1824-7, William Blake
「レス川の辺りのマティルダとダンテと、凱旋車に乗ったベアトリーチェ」
煉獄は山の形をしていて、その頂上、
天国に一番近い部分に
「地上の楽園=エデンの園」が位置している。
そこを歩いていて、対岸の案内者マティルダが、
ダンテと永遠の淑女ベアトリーチェを再会させる。
この段階で、もう罪を贖ったスタティウスも、
ウェリギリウスとともに、ダンテに同行している。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
「凱旋車からダンテに話しかけるベアトリーチェ」
凱旋車は4使徒に囲まれた形になっている。
地上の楽園では何もかもが虹色の表現。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
再開を果たしたダンテとベアトリーチェ。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
クローズアップ。尊い・・・。
この後、ベアトリーチェを案内として、天国へと向かう。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
最後に、天獄篇の中から、
ダンテとベアトリーチェ、聖ペテロと聖ヤコブに、
聖ヨハネが降臨してくる。
三位一体を象徴するような構図。



次回も、ブレイクのテンペラ画を中心に続きますよ。



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William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London(ウィリアム・ブレイク展、2019年、テート・ブリテン)-1-

以前よりはのんびりしているものの、ガーデニングで庭にいることが多くて、PC作業滞り中、そんなわけで、ブログ更新遅れ気味です。


今回から、2019年の11月に訪れたテート・ブリテン美術館でのWilliam Blakeウィリアム・ブレイク)展のイメージを。
2-3年前から、美術館でも写真撮影がOKになってきている。それでも、モバイルで撮影するのを前提に許可していることが多いので、ガンレフは不可・・・などという場合も無きにしもあらず、なのでこの時は、小型のミラーレス持参で。

ブレイクに関してはあまりにも有名で、いまさら解説するのもおこがましい・・・かと思うので、上記リンクに丸投げ。
どちらかといえば、詩人の方で評価されている感があるように思うけれど、絵画の方も幻視・象徴的。
18世紀的フォルムの人物像で描かれているのだけれど、どこか19世紀末アール・ヌーヴォーや、ベルギー象徴派を思わせる、その先駆けとなったような流動的な描線、僅かな彩りが施されたモノクロームな画面等で、彼自身の時代とは完全に一線を画した、というか、およそ現世そのものと一線を画した、独自の次元・世界観がくりひろげられている。


William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
エキジビション・ポスター。原画は、
'Europe' Plate I, Frontispiece,
'The Ancient of Days', 1827

'Europe' Plate I, Frontispiece,'The Ancient of Days', 1827, William Blake
現世を設計・創造している創造主・・・
に見えるけれども、実際には
ブレイク自身の生み出した神話体系の中の、
「ユリゼン」
この原画は、エキジビションの最後に飾られている。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
ウィリアム・ブレイクはロンドンのど真ん中、
ソーホーで生まれ育っている。
現在は取り壊されて、商業ビルになってしまった
角に建つ生家の写真は、20世紀中頃のもの。
ブレイクの生まれ育った、18世紀後半は
このソーホーも中流家庭・商家のエリアだったのだけれど、
19世紀中頃から荒廃してスラム化する。
そのため、後年ブレイクの出自が、
貧しい商家と誤解されていた。
実際には、そこそこに裕福な靴下商人の家庭だった。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
唯一(と思われる)彼の自画像は、
鉛筆のドローイング。
本国のイギリスでは、この展覧会が初公開だった。
なんだか目が透視しているような・・・(笑)。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
コロナ騒動が持ち上がる以前の、
何もかもが普通だった時代の展覧会風景。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
エッチング版画やペン画の作品が多くて、
間近で鑑賞できるようになっている。

ここからは、展示作品の羅列で。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
Albion Rose 1793年頃。
たこの作品は、テートの所蔵ではなくて、
アメリカの Huntington Libraryから
貸し出しを受けたもの。
「Albion(イギリス/ブリテンの意)の興隆」
物質主義の束縛から逃れた
精神性を託して描かれている。
展覧会の筆頭を飾るにふさわしい作品。

Oberon, Titania and Puck with Fairies Dancing, c.1786, William Blake
Oberon, Titania and Puck with Fairies Dancing, 1786年頃。
水彩着彩鉛筆画。
シェイクスピアの「夏の夜の夢」のフィナーレのシーン。
現在「フェアリー」というと連想するフォルムに、
強く影響を与えていると考えられている。

Joseph of Arimathea among the Rocks of Albion, c.1810, William Blake
Joseph of Arimathea among the Rocks of Albion, 1810年頃。
「アルビオンの岩に囲まれたアリマテヤのヨセフ」
アリマテヤのヨセフが、キリストの葬儀を果たして、
聖杯をブリテンにもたらしたという伝説に触発されて、
16歳の銅版職人見習いの時代に描かれた銅版画。
それを再び、50代の頃に手直ししたものが、
この現在の作品。
ヨセフをあたかもドルイド僧のようなコスチュームで
描いていて、宗教の根源にある
普遍性を象徴するとも考えられている。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
Plate 4 of ‘Visions of the Daughters of Albion’
「アルビオンの娘(英国女性)の幻視」
と題された詩に添えられた挿絵。
「隷属させられて絶望に涙する」に対応する部分。
英国フェミニズムの先駆者の
メアリ・ウルストンクラフト著
女性の権利の擁護」との
関連性も考えられている。

Gowned Male (probably Urizen), Sitting Examining a Book, 1794, William Blake
Gowned Male (probably Urizen), Sitting Examining a Book, 1794年頃。
「ユリゼン」と考えられている。
神話体系の登場神ユリゼンが、
書物をひもとく。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
Plate 2 of ‘Urizen’: ‘Teach these Souls to Fly’1796年頃。
同じく神話詩「ユリゼン」の挿絵。
「魂に飛翔(自由)を教える」
これらの挿絵はrelief etching
(レリーフ・エッチング)という独自の手法
(具体的にどのような技法だったのかは
はっきりしていない。)のプリントに、
インクと水彩で着彩されている。
バラ色の美しい作品。

The Book of Thel, Plate 6, 1796, c1818, William Blake
The Book of Thel, Plate 6, 1796, c1818
これはまた別の詩篇「The book of Thel」より。
これも同じくレリーフ・エッチングの手法で刷られて、
着彩されている。
この詩篇では、移ろいゆく生命の存在意義・・・というような、
哲学的な内容が、「星の王子さま」のように、
探求してさまようThel(セラフィム天使の娘達の一人)
を主人公に展開されている。

Book of Thel (Copy I), 1789, William Blake
Book of Thel (Copy I), 1789, William Blake
で、これが実際の「The book of Thel」第一刷の1ページ。
レリーフ・エッチングの手法で、
テキストと挿絵を同一紙面にプリントする、
それも小ロットのハンドプリントができるようになり、
出版社を通じなくても出版が可能になった。
いわゆる、自主制作誌のハシリだったというわけです。
生涯に10冊以上の本をこの手法で出版している。

The Tyger, Songs of Innocence and of Experience, c.1795, William Blake
"The Tyger, Songs of Innocence and of Experience, c.1795"
ブレイクの詩の中でも、著名なものの一つ、「虎」。
「無垢と経験の歌」の中の一編で、無垢を象徴する羊、
力強く残忍な経験を象徴する虎、
全編を通して、この相反する存在を生み出した
神の意図を模索するテーマになっている。
善悪2元論ではなくて、
人間に人生に存在する両義性の認識と、
その融合(すり合わせ)へと昇華させている。
・・・って、ヴィジュアル系(?)なのに、
思想的な背景を書きすぎて脳がつかれた。
以下、さらっと流します(笑)。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
The Voice of the Ancient Bard,
Songs of Innocence and of Experience, c.1794
同じく「無垢と経験の歌」の中の一編。
「古代吟遊詩人の歌声」。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
The Divine Image,
Songs of Innocence and of Experience, c.1794
「無垢と経験の歌」の結章の部分で、
四善(慈悲、哀れみ、平和と愛)に形作られた
理想像で全編の結びとしている。
ということよりは・・・、この
アールヌーヴォー的な画面構成に
意識が行くんですけど・・・(笑)。

William Blake Exhibition, 2019, Tate Britain, London
America a Prophecy, 1793
「アメリカの予言」の扉。
「ヨーロッパの予言」と対になる詩篇。
革命の一つだったアメリカ独立戦争、
フランス革命の歴史的大革命を経た両大陸で、
結果的にワシントン、ナポレオン支配体制が確立して、
奴隷制や身分制は解決されないまま、
その後の引き続く革命・動乱を予言する内容になっている。
(って、まだごちゃごちゃ書いてるし・・・。)

Plate 3, 'Preludium, The Shadowy Daughter...', William Blake
America. A Prophecy, Plate 3,
'Preludium, The Shadowy Daughter...'
同じく「アメリカの予言」より。
「前奏曲」と題されたページ。

Plate 9, 'In Thunders Ends the Voice...', William Blake
America. A Prophecy, Plate 9,
"In Thunders Ends the Voice...."
同じく「アメリカの予言」より。
これも、水彩で描かれたあけぼのが目に留まる。

Plate 10, 'The Terror Answered...', William Blake
America. A Prophecy, Plate 10,
"The Terror Answered..."
このようにして、18版のページで構成されている。



・・・・というところで、今回はここまで。
また次回に続きます。
気力と調査能力の続く限り、解説を添えて(笑)。



















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Church of St Nicholas, Thames Ditton(聖ニコラス教会、テムズ・ディトン)

  • Posted by: Kotomicreations
  • 2021-04-05 Mon 18:01:35
  • 場所
ずいぶん暖かくなったかと思ったら、また今週は夜が氷点下で、昼も10℃以下の冬日に逆戻り。
もう夏時間になって、日差しはすっかり春・・・なんだけども、北ヨーロッパはそうそうすんなりと暖かくなってはくれない。
日差しにつられて、ガーデンセンターに出かけては、苗を買ってきて地植えしては・・・霜で死なせてしまうんだな・・・。
そんなわけで、4月半ばに気温が本格的に暖かく安定するまで、ハーディーじゃない子達は、ビニール温室でスタンバイさせているのだった。

さて今回は、ウチSurbiton(サービトン)の隣町、Thames Ditton(テームズ・ディトン)にある教会のイメージを。

Church of St Nicholas(聖ニコラス教会)という小さな教会なのだけれど、12世紀まで歴史を遡ることができるというノルマン様式の教会で、中世以来の歴史的建築/装飾も保存されていて興味深いところ。
歩いて30分程度のところにあるので、散歩ついでにときどき立ち寄っている。
今回の写真は、2019年5月撮影のもの。



St Nicholas Church, Thames Ditton
チャーチ・ヤードの墓地と教会。
角石を組んで、その間をフリント石で
埋めていくのは典型的なノルマン様式。
その上の白いウェザーボード張りと、
トンガリ屋根は、もっと後に(19世紀頃かな)
付け加えられたもの。

St Nicholas Church, Thames Ditton
エントランスは建物の横に設けられている。

St Nicholas Church, Thames Ditton
エントランスから入ったところの眺め。
真ん中が中世由来の部分で、
その奥(北側)に14-15世紀に、
手前(南側)に19世紀にチャペルが付け足されて、
現在のこの3つの区画に分かれた構造になった。

St Nicholas Church, Thames Ditton
その中央の部分。
一番手前に写っているのはFont(フォント=洗礼盤)で、
12世紀初期のもの。

St Nicholas Church, Thames Ditton
反対側から見たところ。
その奥の部分がベルタワー。
最初の外観の写真で手前に写っているタワー部分。
下がっている青と黄色のロープは、
手動式の鐘を引くためのもの。
複数の鐘が16世紀に記録されているけれど、
現在の6つの鐘に増やされたのは18世紀のこと。
風向きによっては、ここの鐘の音が、
ウチの庭にも聞こえてくる。

St Nicholas Church, Thames Ditton
中央の梁の上に掲げられた、11枚のオーク板に描かれた
テンペラ画は「最後の審判」を描いたもので、16世紀のもの。
この絵が描かれる40年ぐらい前に、ヘンリー8世の
英国教会の分離が起きているわけで、
その頃のカトリック装飾破壊を逃れた数少ない例。
というか、20世紀に別のペイントが施された板の下から、
再発見されたものなのだそう。
中世の教会は、壁全体がカラフルな板絵装飾で
埋め尽くされていたのだった。

St Nicholas Church, Thames Ditton
その奥のChancel(チャンセル=内陣)部分。
壁の一部は12世紀に遡るそうだけれど、
ステンドグラスは新しい。
19世紀の修復時のものかと。

St Nicholas Church, Thames Ditton
その左側の14世紀に増築されたチャペル部分。
スクリーン(間仕切り)は、14世紀かどうか知らないけれど、
古風な味わい。

St Nicholas Church, Thames Ditton
ここもステンドグラスは、
全体に新しい19世紀(?)のもの。

St Nicholas Church, Thames Ditton
オリジナルのチャンセルとの間にある、
ゴシックな石造構築物・・・は、
中世のConfessional(告解室)じゃないかな。
チャンセルの壁に沿って設けられていたのが、
その先に増築されたので、間仕切りみたいになって、
残されている・・・んじゃないかと、
これは想像だけど。

St Nicholas Church, Thames Ditton
別の角度で。

St Nicholas Church, Thames Ditton
引きで見たところ。
右側の柱部分に、16世紀のMonumental brass
(真鍮記念板・・・とでも訳せばいいのかな?)
が収められている。

St Nicholas Church, Thames Ditton
こんなもの。
これは、ここでは2番目に古くて、
一番古いのは、Erasmus Forde(エラスムス・フォード)のブラス
と呼ばれているもの。上のものより1年古い。

FordeBrassTrim.jpg
Public Domain, Link


全体像を撮っていないので借り物写真。

Brass
その昔にこんなクローズアップしか撮ってないし(笑)。

St Nicholas Church, Thames Ditton
その14世紀の増築部分・・・の手前は
15世紀の増築部分だそうで、
そこにBox Pew
(升席状態になった教会の座席区画)
が残っている。
元々はドアが付けられていて、
一家族で一区画を借り上げていたもの。
19世紀以降そのシステムがなくなって、
大半がベンチに置き換えられている。

St Nicholas Church, Thames Ditton
エントランスと繋がった、
右側の増築部分は19世紀のもの。
Nave(ネーヴ=身廊)との間にあるのは、
pulpit(パルピット=講壇)。
これも19世紀ゴシック・リヴァイヴァルな感じ。

St Nicholas Church, Thames Ditton
19世紀増築のチャペル部分天井。
木造梁をむき出した形で、
一番古いように見えるのに、一番新しいという・・・。

St Nicholas Church, Thames Ditton
最後はヴィデオで。
パイプオルガンの練習中だったので、
BGM付きですよ。






Church of St Nicholas, Thames Ditton
(聖ニコラス教会、テムズ・ディトン)


Map:











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