- 2022-02-08 Tue 15:24:01
- 博物館・美術館
今回からは、Museum of the Home(家の博物館) のイメージを。
この博物館は、2021年6月に(途中、ロックダウンにもあって)3年に渡るリニューアルの後に再オープンした。
以前は、歴史的ファニチャー/インテリアを展示する、Geffrye Museum (ジェフリー博物館)だったのだけれど(標本箱では2011年の<このページ>から2回のエントリー)、Home(家・・・というか家庭という概念も含まれている)にフォーカスして、器と同時に(それ以上に)その中の「人」と「暮らし」に重点を移行させた博物館として生まれ変わった。
これにはちょっとした背景があって、この博物館が入っているのは、ロンドン市長も努めた17世紀の有力者、Robert Geffrye(ロバート・ジェフリー卿)の設立したアームスハウス(身寄りのない老人のための慈善住宅)で、そこからジェフリー博物館という名前も採られていた。
彼は鍛冶屋から豪商に立身した人物なのだけれど、財を築いた手段が、17世紀の奴隷取引会社への投資の成功。
21世紀に入って、一段と植民地・奴隷制度の加害者として、猛反省を強いられている(自主反省でもあるのだけれど)英国では、「植民地・奴隷制度」に関与して財を築いた、旧財閥・歴史的有力者に対する風当たりが異常に厳しい。
極端から極端もいいところで、パラノイア的な感じ。関連人物の像なども、各都市から撤去される方向にある。
(それも歴史的な事実なんだから、ニュートラルに受け入れろよ・・・と、第三者の私などは思うのだが、ま、いつでも人心、社会的・政治的な軸はブレブレなもの。)
そんな時代背景があって、この博物館もおおっぴらにジェフリーを名乗ることは肩身が狭くなってきたというのが一因。
そしてこの地域は、それでなくとも旧植民地からの移民人口の高い地域なので、一段と肩身は狭いということに。
そんなわけで、歴史的なこのアームハウスの器よりも、切り口を家庭・家族・コミュニティに生きる「人」に切り口を持っていくことで、存在意義をつなごうとしている・・・というわけ。
その、現在がどんなものか「人嫌い・モノ好き」の私が、オープンして間もない2021年7月に偵察に行ってきた(笑)。

館名も一新、新たな看板。
現在はオーヴァーグラウンド線Hoxton(ホクストン)駅
出口の向かい側が入口になっている。
以前の歴史的アームスハウスの建物から、
そんなに乖離したいのか(笑)。

新しい入口のコンテンポラリーな建物。
(いや単に、駅から便利というだけで、
入口の位置を変えたのだとは思うけど。)

エントランスから見える庭。
この庭が、まだまだ育成過程だったけれど、
和めるすぐれもの。
それはまた後ほどフィーチャーすることに。

17世紀のエボニーと象嵌のキャビネット。
展示の最初は歴史的な
家具の紹介から始まる。
目に留まった、自分好みのものを
拾い集めて撮っています。

話は飛んで、19世紀アーツアンドクラフトの
家具調度品。

ウチにも欲しいかも、な、アームチェア。

ロセッティがデザインした・・・と考えられている、
ロセッティ・チェア。

19世紀の家具のカタログ。

19世紀のインテリアのイメージ。

これは、18世紀のご家庭の様子。
Polite(上品)ということが、
お約束だった時代で、
質のいいシンプルなインテリアに、
読書や縫い物が上品な趣味と見なされた。
ここからは、博物館では書いていない、私の解説。
同じ18世紀でもコンチネント(特にフランス)は、ロココ文化熟爛期だったので、もっと退廃してゴージャスなテイスト。当時のイギリスは、ヂミでダサい田舎文化と見なされていた。
その後、大陸は革命の動乱に巻き込まれて、文化どころではなくなってしまのだけれど、イギリスでは対岸の火事。逆に産業革命をさきがけて、経済的に世界の中心を奪い取ってしまう。
そして、19世紀はイギリスが、経済的・文化的に最高潮に達した時代で、おのずと美意識にも自信の程が現れる。
18世紀のPoliteをくつがえす美意識として生まれたのが、19世紀後半のアーツアンド・クラフト運動や耽美主義だったのだ。

話をもどして・・・、
上の絵画でお父さんが座っているような、
18世紀の椅子。

18世紀のイージーチェア。

19世紀のアームチェア。

17世紀後半のターキーワーク・チェア。
というのは、当時輸入され始めた、
トルコのカーペットのような
生地が使われていたため。
こんな風に、新しく設立された展示室では、その時代のスタイルの家具を展示して、その社会的背景などをボードで解説する方法が採られているのだけれど、なんだか順番や流れがチグハグで、よほど興味を持ってボードを読み込まないことには、何がいいたいのか意図があまり読み取れない。
最たるものが・・・、

この展示室。
最新のアレクサに持っていきたいようだけど、
デジタル(メカニック)が切り口のテーマなのか、
そこになぜ暖炉の飾板と壁紙?
適当に収蔵品ブチ込んだとしか思えない。
展示方法、テーマともにかなりお粗末。
気を取り直して、
上階の以前からの展示室をざっと見て回ることに。

ここからは、以前のジェフリー博物館だった頃の
展示と同じ。
少し小綺麗に大掃除された感じではある。
最初は1630年の大広間。
商人の店の2階という設定。

主人の家族も使用人も皆が、
一緒に食事をして、
子どもたちはここで教育を受ける。

1695年のパーラー。
家族が客を招いて食事をしたあと、
食卓を片付けて、ゲームを始める。

フルートが演奏される、という設定。
ロンドン大火後に再建されたタウンハウスの
内装が参考にされているそう。

1745年のパーラー。
上のパーラーと板張りの内装は似ているものの、
椅子がシンプルな18世紀のスタイルに。

朝、家族が起き出してくるまでに、
女中たちが、暖炉を掃除して
火を入れるのに忙しい。
というところで、次回に続きます。
Museum of the Home(家の博物館)
Ex - Geffrye Museum(旧ジェフリー博物館)
Map:
*************************
by KotomiCreations
KotomiCreations - Contrado shop item detail
(デジタル・プリント雑貨 - コントラド・アイテム詳細)
Page1, Page2
この博物館は、2021年6月に(途中、ロックダウンにもあって)3年に渡るリニューアルの後に再オープンした。
以前は、歴史的ファニチャー/インテリアを展示する、Geffrye Museum (ジェフリー博物館)だったのだけれど(標本箱では2011年の<このページ>から2回のエントリー)、Home(家・・・というか家庭という概念も含まれている)にフォーカスして、器と同時に(それ以上に)その中の「人」と「暮らし」に重点を移行させた博物館として生まれ変わった。
これにはちょっとした背景があって、この博物館が入っているのは、ロンドン市長も努めた17世紀の有力者、Robert Geffrye(ロバート・ジェフリー卿)の設立したアームスハウス(身寄りのない老人のための慈善住宅)で、そこからジェフリー博物館という名前も採られていた。
彼は鍛冶屋から豪商に立身した人物なのだけれど、財を築いた手段が、17世紀の奴隷取引会社への投資の成功。
21世紀に入って、一段と植民地・奴隷制度の加害者として、猛反省を強いられている(自主反省でもあるのだけれど)英国では、「植民地・奴隷制度」に関与して財を築いた、旧財閥・歴史的有力者に対する風当たりが異常に厳しい。
極端から極端もいいところで、パラノイア的な感じ。関連人物の像なども、各都市から撤去される方向にある。
(それも歴史的な事実なんだから、ニュートラルに受け入れろよ・・・と、第三者の私などは思うのだが、ま、いつでも人心、社会的・政治的な軸はブレブレなもの。)
そんな時代背景があって、この博物館もおおっぴらにジェフリーを名乗ることは肩身が狭くなってきたというのが一因。
そしてこの地域は、それでなくとも旧植民地からの移民人口の高い地域なので、一段と肩身は狭いということに。
そんなわけで、歴史的なこのアームハウスの器よりも、切り口を家庭・家族・コミュニティに生きる「人」に切り口を持っていくことで、存在意義をつなごうとしている・・・というわけ。
その、現在がどんなものか「人嫌い・モノ好き」の私が、オープンして間もない2021年7月に偵察に行ってきた(笑)。

館名も一新、新たな看板。
現在はオーヴァーグラウンド線Hoxton(ホクストン)駅
出口の向かい側が入口になっている。
以前の歴史的アームスハウスの建物から、
そんなに乖離したいのか(笑)。

新しい入口のコンテンポラリーな建物。
(いや単に、駅から便利というだけで、
入口の位置を変えたのだとは思うけど。)

エントランスから見える庭。
この庭が、まだまだ育成過程だったけれど、
和めるすぐれもの。
それはまた後ほどフィーチャーすることに。

17世紀のエボニーと象嵌のキャビネット。
展示の最初は歴史的な
家具の紹介から始まる。
目に留まった、自分好みのものを
拾い集めて撮っています。

話は飛んで、19世紀アーツアンドクラフトの
家具調度品。

ウチにも欲しいかも、な、アームチェア。

ロセッティがデザインした・・・と考えられている、
ロセッティ・チェア。

19世紀の家具のカタログ。

19世紀のインテリアのイメージ。

これは、18世紀のご家庭の様子。
Polite(上品)ということが、
お約束だった時代で、
質のいいシンプルなインテリアに、
読書や縫い物が上品な趣味と見なされた。
ここからは、博物館では書いていない、私の解説。
同じ18世紀でもコンチネント(特にフランス)は、ロココ文化熟爛期だったので、もっと退廃してゴージャスなテイスト。当時のイギリスは、ヂミでダサい田舎文化と見なされていた。
その後、大陸は革命の動乱に巻き込まれて、文化どころではなくなってしまのだけれど、イギリスでは対岸の火事。逆に産業革命をさきがけて、経済的に世界の中心を奪い取ってしまう。
そして、19世紀はイギリスが、経済的・文化的に最高潮に達した時代で、おのずと美意識にも自信の程が現れる。
18世紀のPoliteをくつがえす美意識として生まれたのが、19世紀後半のアーツアンド・クラフト運動や耽美主義だったのだ。

話をもどして・・・、
上の絵画でお父さんが座っているような、
18世紀の椅子。

18世紀のイージーチェア。

19世紀のアームチェア。

17世紀後半のターキーワーク・チェア。
というのは、当時輸入され始めた、
トルコのカーペットのような
生地が使われていたため。
こんな風に、新しく設立された展示室では、その時代のスタイルの家具を展示して、その社会的背景などをボードで解説する方法が採られているのだけれど、なんだか順番や流れがチグハグで、よほど興味を持ってボードを読み込まないことには、何がいいたいのか意図があまり読み取れない。
最たるものが・・・、

この展示室。
最新のアレクサに持っていきたいようだけど、
デジタル(メカニック)が切り口のテーマなのか、
そこになぜ暖炉の飾板と壁紙?
適当に収蔵品ブチ込んだとしか思えない。
展示方法、テーマともにかなりお粗末。
気を取り直して、
上階の以前からの展示室をざっと見て回ることに。

ここからは、以前のジェフリー博物館だった頃の
展示と同じ。
少し小綺麗に大掃除された感じではある。
最初は1630年の大広間。
商人の店の2階という設定。

主人の家族も使用人も皆が、
一緒に食事をして、
子どもたちはここで教育を受ける。

1695年のパーラー。
家族が客を招いて食事をしたあと、
食卓を片付けて、ゲームを始める。

フルートが演奏される、という設定。
ロンドン大火後に再建されたタウンハウスの
内装が参考にされているそう。

1745年のパーラー。
上のパーラーと板張りの内装は似ているものの、
椅子がシンプルな18世紀のスタイルに。

朝、家族が起き出してくるまでに、
女中たちが、暖炉を掃除して
火を入れるのに忙しい。
というところで、次回に続きます。
Museum of the Home(家の博物館)
Ex - Geffrye Museum(旧ジェフリー博物館)
Map:
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by KotomiCreations
KotomiCreations - Contrado shop item detail
(デジタル・プリント雑貨 - コントラド・アイテム詳細)
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